ネムラセテ、、、
 変化のない、ただ繰り返すだけの毎日。

 人身事故による電車の遅れを報せるアナウンスが、今日も頭上から降ってくる。
 それを耳にする度、恐らくは死んだであろう見知らぬ人に、憬れを抱く。

 俺にはそんな勇気はないから。

 人はそう簡単には死ねない。
 守るべき大切なものを見捨てられる程、俺は強くはない。
 哀しむ姿を思い浮かべる度、胸が締め付けられる。

 それに。
 生きていたくないとは思っているが。
 死にたいと思っているわけではない。

 だからいつも。今日こそは、と思いつつも、俺は最初で最期の一歩を踏み出すことが出来ない。
 近づいてくる音に潜む死の恐怖に足が竦んでしまって。

 ほら、今日も。
 目の前を轟音と風が通り過ぎて行く。
 俺はただ、それを見送るだけ。

 死が許されないのなら、せめて。
 生の放棄を許して欲しいと思う。
 このまま。ずっと永遠に醒めることのない眠りに就かせて欲しい。
 けれど、人は夜が明ければ目覚めるものだし、一度歯車に埋め込まれてしまえばそこから抜け出すことなんて不可能だから。

 今日もまた。
 生きているわけではなく、死んでいないだけの一日に流されて行く。
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