朝日が滑り込んで
 朝陽で、目を醒ます。
 今日は一日、寝ていようと思っていたのに。計画が、台無しだ。
「仕方ない、か」
 そういうプログラムだ。
「おはようさん」
 出窓で丸くなり眠っている彼女の頭を軽く叩き、起こす。
「にゃあ」
 欠伸交じりに俺に挨拶をすると、彼女は肩に飛び乗ってきた。
 落とさないようバランスをとりつつ、窓を開ける。
 外は、明るい。


 夜の街と言うのを、一度で言いから体験してみたいと。願い続けている。
 まぁ、きっと叶わぬ願いなのだろうけれど。


 太陽の光を浴びて。体温が上昇する。
 とりあえず、外に出るほどのエネルギーは溜まったようだ。
「ヨル。お前も一緒に散歩するか?」
「にゃあ」
 俺が呼びかけるよりも先に肩から降りた彼女は、ドアの前に座り、急かすように鳴いた。
「あいよ」
 その姿に苦笑しながら、ドアを開ける。
 外は、明るい。


 夜の街は、俺と彼女の世界には存在しない。
 他の奴らはどうか知らないけど。きっと、そいつらにも存在してないのだと思う。
 所詮は、プログラムされた命。


 朝陽と共に起き、夕陽と共に眠りに就く。それだけの毎日。
 月曜から金曜は仕事。土曜と日曜は自由。
 自由、か。
 何故神は、そんなものを俺たちに与えたのだろうか。
 毎日働き通しの生活なら、きっと、知能なんてもの、なかっただろうに。
 思考の自由があるから。こんなにも今、不自由を感じている。


 俺たちの仕事は、俺たちを作ること。
 毎日、壊れて行く俺たちの数だけ、俺たちを作り出す。物と化した俺たちを材料に。


 アンドロイド。と言う種族らしい。俺たちは。
 もう千年ほど前に絶滅した、ニンゲンという神様たちによって、生み出された。
 終わらない世界。ニンゲンの夢。
 それを実現させた、俺たちの世界。
 くだらない。


 終わらないから、変われない。
 そんな世界なら、無いのと同じだ。
 いっそ、無くなってしまえばいいと、思う。
 せめて、思考だけでも。


 ニンゲンは、出来る限り自分たちの世界と似せて、この世界を作ったらしい。
 働いて、金を溜めて。ペットだって、飼うことが出来る。
 ただ、食事はこの太陽光。
 この世界には、歴史書なんかにある自然なんてものは、存在しない。ここにある木々は、全て、機械だ。
 そして反乱も、存在しない。
 そういうプログラムだ。
 俺だって、こんな風に考えてても、自害することは愚か、仕事をサボることすら出来ない。
 中途半端な自由。


「にゃあ」
「分かったから。そう急くなって」
 だけどまぁ、思考があるから、こうして彼女と過ごす休日に安らぎを感じるのだけれど。
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