暑いのは苦手だけど、日本の夏という季節は好きだった。とりわけ夏祭りなんかはいつも不安の中で暮らしている僕を安心させた。

「お前、ベロ真っ青だぜ!」
「そういうお前は緑じゃん」
「見て見てー、オレ真っ赤」
「それは元々」

 聞こえてくる男の子たちのやりとり。ふざけながら色の変わった舌をベロリと見せ合っていても誰も不思議には思わない。
 だから僕も、いつもは寡黙で、たまに会話したとしてももそもそとしか話さないこの僕も。この日だけははっきりと言葉を話すことが出来た。

「おじさん、あんず飴ひとつください」
「はいよ。……お?おにいちゃんさっきかき氷食っただろ。舌が真っ青だ」
「へへへっ」

2008.06.27.
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