少年の疑問

 世の中にはまだまだ知らないことがあるんだなぁ。
 少年はそう思いながらいつものように真っ暗な田んぼ道を帰っていた。
 少年は誰もが気にしないようなことを疑問に思うような子だった。
 どうして僕は意識もしてないのにツバを飲み込めるんだろう?
 どうして僕は意識もしてないのに呼吸が出来るのだろう?
 そんなどうでもいいことを考えては、放課後理科室に行き先生に質問していた。
 先生が答えられないと少年は自分で調べて答えを探した。探さなければならなかった。疑問は時に少年の身体に障害をもたらしたからだ。
 どうしてツバを飲みこめるのかと考えたときには口に唾液が溜まって吐き出すしかなくなってしまい、呼吸のことを考えたときにはその仕方を忘れ呼吸困難に陥った。
 そしてまた今日、少年は新たな疑問を浮かべていた。今日理科の授業で習ったばかりのことだ。
 生物には単細胞生物と多細胞生物がいる。そして単細胞生物はたった一個の細胞だけで生きている。
 それなのに、どうして多細胞生物は沢山集まって一個なんだろう。僕は本当に一人の人間なのだろうか?
 僕はもしかしたら……。
 そこまで考えて、少年は駄目だと思った。
 けれどそう思ったときには既に遅く、少年の身体はドロリとした液状のものへと変化していた。
2009.11.06.
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