捕食

 約束よ。私たちは生涯を添い遂げるの。

 永遠の愛を近い合い、柔らかなキスをする。私を包む甘い熱に、今度こそはと心に誓う。
 大丈夫、大丈夫。この人は今までの人とは違う。私と共に生きてくれる。
 後ろに回り込んだ彼が、私を乱暴に押さえ込む。その力強さに私は胸を撫で下ろす。

 はず、だったのに……。

「なん、で」
 彼はそれだけをこぼすと、息絶えてしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさいっ」
 泣きながら彼を抱きしめる私は、それでも口を動かし続けた。メリメリと音を立てて私の顎が彼の肉体を喰い破る。
 またやってしまったわ。
 どうして誰も逃げ延びてくれないのかしら。
 泣きながら謝りながら。それでも自慢の鎌と顎で彼を貪り続けることをやめられない。

 ――私は、カマキリ。
2009.11.06.
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